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動物実験一(6)
Kobayashiら (1991)は被験動物を2つのグループに分けて、それぞれ一般脱脂乳(対照群)とS100脱脂乳 (実験群)を飲ませた。7日連続で飲ませた後、X放射線で被験動物を照射し、それから実験終了までそれぞれ一般脱脂乳とS100脱脂乳を飲ませ続けた。S100脱脂乳を飲ませた被験動物の生存率は対照群より著しく高く(Fig. 2参照)、リンパ関連組織(パイエル板、腸間膜リンパ節、脾臓)の細胞外層の IgA含有量は対照群より(6)高く(Fig. 3をご参照)、腸管内にある乳酸菌(善玉菌)の数量も増えた。
Fig. 2.対照群より、実験群の生存率は統計上著しく高い (6)。*p<0.05(6)。
Fig. 3. 被験動物のパイエル板(Peyer’s Patch; PP)、腸間膜リンパ節(Mesenteric Lymph Node; MLN)及び脾臓(Spleen; SPL)の中のIgA含有量を測定すると、対照群より、実験群のIgA含有量は高い(6)。
動物実験二(7)
Nomoto ら (1992)はネズミの腸管から分離した大腸菌(E. coli)を刺激物として牛に免疫刺激を与え、その乳汁を収集して免疫脱脂乳と免疫濃縮乳清蛋白(Whey Protein Concentrate, WPC)を作った。被験動物にそれぞれ非免疫脱脂乳 (Skim-C)、非免疫低温殺菌脱脂乳 (低温工程、天然抗体 (Natural Antibody, NA)を保存、Skim-NA)、非免疫WPC(WPC-C)を飲ませる動物を対照群にして、E. coli特異性抗体(Specific Antibody, SA)を含んだ免疫WPCと免疫脱脂乳を飲ませる動物を実験群にした。
7日連続飲用後、抗がん剤5-FUをネズミに注射し、人体に対する抗がん剤の副作用(5-FUが腸管の中のE. coli細菌数を増加させ、感染を引き起こす)を模擬した。E. coli特異性抗体を含んだ牛乳は効果的に腸内のE. coli細菌数を抑制できる(Fig. 4とTable 1参照)。作者は長期的に化学療法を受けた癌の患者が特異性抗体を含んだ免疫WPCあるいは免疫脱脂乳を飲用したら、腸内のE. coli細菌数を低減し、よりいっそうの感染を抑制できると推論した(7)。
Fig.4. 食細胞に食われたE-coli数量は、対照群より実験群の効果が統計上著しく高い (7)。 * p<0.01 Skim-C : 対照群 (非免疫脱脂乳);Skim-NA : 対照群(非免疫低温殺菌脱脂乳、NAを保存) Skim-SA : 実験群(免疫脱脂乳、SAを含む);WPC-C : 対照群(非免疫WPC); WPC-SA : 実験群(免疫WPC 、SAを含む)
5-FUの投与前または投与後の日数 経験 |
盲腸にある大腸菌のLOG10数 | |||
Exp | 何も飲ませず | スキムミルク-C | スキムミルク-NA | スキムミルク-SA |
–7 | 3.51±0.74 | 3.51±0.74 | NT | 3.51±0.74 |
–1 | 3.68±0.57 | 3.34±0.55 | NT | 3.85±0.81 |
+1 | 8.19±0.57 | 8.00±0.57 | NT | 6.71±1.88** |
+3 | 8.09±0.24 | NT | NT | 6.39±1.04* |
+7 | 8.72±0.11 | NT | NT | 8.38±0.28* |
+ 10 | 8.08±0.23 | NT | NT | 8.01±0.27 |
Table 1.5-FU照射前後のE.coli数量変化について、対照群より実験群のE.coli数量は統計上著しく低い(7)。NT, not tested. * p < 0.01 and ** p = 0.06
動物実験三(8)
Ishida ら (1992) は被験動物を2つのグループに分けて、それぞれ一般脱脂乳(対照群)とS100脱脂乳 (実験群)を飲ませた。6ヶ月あるいは16ヶ月連続で飲ませた後、S100脱脂乳を飲ませた被験動物はその腸管細胞の中のリンパ細胞の細菌抑制力が比較的に高く(Fig. 5参照)、腸内細菌の感染と移転を予防する効果がある(8)(Fig. 6参照)。
Fig. 5. 小腸、大腸、盲腸の中の細菌数を測ると、対照群より実験群の腸内細菌数は統計上著しく低い(8)。 * p<0.01
Fig. 6. 血清の中の腸内細菌抗体を測ると、対照群より実験群の腸内細菌数は統計上著しく低い(8)。
* p<0.05, ** p<0.01
上述した文献により、化学療法、放射線療法を受ける癌の患者、及び年を取るにつれて免疫機能が低下する人々にとって、S100脱脂乳が腸管感染リスクを減少する役割を果たすと推論できる。