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ヒト臨床試験一(9)
東南アジア諸国では、口腔粘膜下線維症(oral submucous fibrosis, OSF)がビンロウの咀嚼(areca quid chewing)と密接な関係がある(10)。OSFは罹患時間が続くほど、臨床上、悪性への転化率が高くなる。そのため、早急に診断・治療を受けて、悪性への転化を予防できる。
Tai ら (2001)はOSF被験者46人に口腔習慣を調整させた。その上、その中の26人にはS100脱脂乳を飲ませ(毎日2回、毎回45グラム、実験群)、残りの20人には口腔習慣しか調整させなかった(対照群)。3ヶ月連続飲用後、OSFの臨床症状及び口開き程度を評価した。
実験結果を見てみると、S100脱脂乳を飲むと、OSF症状の改善は20%~80%に達し、白板症あるいは紅板症(leukoplakia or erythroplakia)、スパイス耐性(intolerance to spices)及び口腔乾燥症 (xerostomia)への改善には統計的有意差が見えたことがわかった(Table 3参照)。また、臨床観察により、被験者の口開き程度(繊維化程度の緩和)への改善にも統計的有意差が見えたことがわかった(Table4参照)。
Tai らは次のようなメカニズムがあると推測した。すなわち、S100脱脂乳の中の抗炎症成分が「繊維化サイトカイン」(fibrogenic cytokines)の産生を抑制する同時に、「抗繊維化サイトカイン」(antifibrotic cytokines)の産生を促進し、口腔繊維化程度を緩和する。それによって、被験者の口開き程度を増大する。
治療群(n=26) | 対照群(n=20) | |||
症状や兆候 |
ベースライン時に苦情の |
終了時、改善のある患者 ケースナンバー(%) | ベースライン時に苦情のある患者 ケースナンバー(%) | ベースライン時に苦情のある患者 ケースナンバー(%) |
スパイス不耐性 | 20 (76.9%)* | 16 (80%) | 17 (85%) | 3 (17.6%) |
口内乾燥症 | 18 (69.2%)** | 13 (72.2%) | 13 (65%) | 2 (15.4%) |
水胞や潰瘍 | 12 (46.2%) | 7 (58.3%) | 11 (55%) | 5 (45.5%) |
灼熱感 | 9 (34.6%) | 7 (77.8%) | 7 (35%) | 4 (57.1%) |
舌移動障害 | 22 (84.6%) | 5 (22.7%) | 16 (80%) | 0 (0%) |
舌炎 | 13 (50%) | 3 (23.1%) | 12 (60%) | 0 (0%) |
白板症または紅色肥厚症 | 7 (26.9%)*** | 5 (71.4%) | 5 (25%) | 0 (0%) |
Table 3. OSFの症状改善程度(9)。 * p<0.001, ** p<0.005, *** p<0.05
終了後開口 | |||||
ベースライン開口 | ≦20mm | 21-30mm | 31-44mm | Total | p value* |
≦20mm | 4 | 8 | 0 | 12 | 0.002 |
21-30mm | 0 | 5 | 5 | 10 | |
31-39mm | 0 | 0 | 4 | 4 | |
Total | 4 | 13 | 9 | 26 |
Table 4. 被験者の口開き改善の程度(9)。 *Chi-squared test。
ヒト臨床試験二(11)
Hirokawa ら (2009)は被験者46人(男性17人、女性9人、31-61歳)にS100脱脂乳を5ヶ月連続で飲ませた(毎日、1-2袋、(30-60グラム)。飲用前、連続飲用3ヵ月後、連続飲用5ヵ月後、3回に分けて測定・比較した。
免疫力の測定 | 測定値 | 得点 |
T 細胞数/μl | 500 | 1 |
T細胞増殖係数 | 0.57 | 1 |
CD4+T 細胞/CD8+T 細胞 | 2.32 | 3 |
Naive T 細胞数/μl | 111 | 1 |
Naive T 細胞/memory T 細胞 | 0.58 | 2 |
CD8+ CD+28 T 細胞数/μl | 120 | 2 |
B 細胞数/μl | 168 | 3 |
NK 細胞数/μl | 241 | 2 |
免疫力総点数 | 15/24 | |
Table 5. 免疫力得点評価(11). |
実験は年齢とストレスにより変化した8つの細胞生化学的指標をテスト項目にした。この8つの測定値を3段階評価に分け、最高を「3」点、中間を「2」点、最低を「1」点にして、延べ8-24点にして、免疫力評価とした(Table 5参照)。免疫力の状態を判定するため、評価は「危険」、「注意必要」、「観察必要」、「良好」、「とても良好」(Fig. 5参照)という5つの健康段階に分けられた。その結果、「観察必要」及びその以下だった16人は5ヵ月後9人に減り、「良好」及びその以上だった8人は5ヵ月後15人に増えた。
被験者24人のS100牛乳飲用前後の免疫力に対する総合判断評価 (Fig. 6参照)は下記通り:S100脱脂乳5ヶ月連続飲用後、得点が平均的に1点増え、「観察必要」及びその以下だった16人は得点が1.5点増え、「良好」及びその以上だった8人は得点が著しく増えなかった。言い換えれば、免疫力が低い人にはS100脱脂乳飲用による免疫力向上効果が大きく、免疫力が良い人には免疫力が過度に向上せず、体の免疫状態を適度の状況に維持することがわかった(11)。
Fig. 5. 被験者のS100牛乳飲用前後の免疫力に対する総合判断評価では、S100牛乳飲用は免疫力を向上させるとわかった(11)。
Fig. 6. S100牛乳5ヶ月連続飲用後、免疫力が低い人には免疫力向上の幅が大きいが、免疫力が良い人には免疫力が過度に向上せず、人体の免疫状態がある程度の状況にとどまらせる(11)。